最近、インターンシップの選考としてよく実施されているグループワーク。
ちょっとしたテーマについてディスカッションをするタイプのものから、新規事業立案のような難易度の高いものまで、様々なグループワークが存在します。
今回はこの「グループワーク」というものを切り口として、仕事をする上でチームビルディングがなぜ重要なのかについて考えてみたいと思います。
グループディスカッションにせよ、新規事業立案にせよ、どのグループワークにおいても、参加者同士の異なる意見をすり合わせ、
一つの解を導き出すことが求められますが、実は単純に意見を一つにまとめることができれば達成できるとは限りません。
なぜなら、グループワークにおいて大切なのは「解を出すこと」だけではないからです。
ほとんどの場合、「その解にメンバー全員が納得している」ということも重要な要素になります。
これは仕事においても同じで、たとえばあるプロジェクトにおいてチームで仕事をしている時に、リーダー1人だけが納得をしている方向性でプロジェクトを進めたとしたら、その方向性に賛同していないチームメンバーはモチベーションが下がり、プロジェクトを辞めてしまう可能性があります。
選考のグループワークが、現実の仕事のシミュレーションだとしたら、ただ成果を出すことだけにこだわってグループワークをする人は、
実際にプロジェクトを任されても同じような仕事の仕方をしてしまうかもしれません。
では、どうしたらグループワークや実際の仕事において、メンバー全員が納得する解を出すことができるのでしょうか?
そのヒントが、「タックマンモデル」と呼ばれる「チームの発達段階」を表した考え方にあります。
「タックマンモデル」とは、20世紀の心理学者B.W.タックマンの提唱した、組織の発達段階を説明した理論で、チームビルディングをする上で非常に有用な考え方です。
この理論によると、組織はForming(形成期)、Storming(混乱期)、Norming(標準期)、Transforming(達成期)という4段階をたどって形成されていきます。
それぞれの段階を少し見ていきましょう。
① Forming(形成期)
チームが結成されたばかりで、まだお互いのことを様子見している時期です。
メンバーがお互いのことを十分に理解できておらず、各々ベクトルが自分に向いています。
チームの中では不安や内向性、緊張感が見られます。
② Storming(混乱期)
個々人の主張が出てきて、メンバー同士の意見がぶつかり合う時期です。
物事の解決に向けてのアイデアがチーム内で出てきやすくなります。
しかし、ビジョンはまだ曖昧で共有されていないため、チームの一体感は生まれていません。
③ Norming(標準期)
個人の役割や、チーム全体の共通のビジョンやルールが明確になる時期です。
チームのゴールが明確になり、共有されていることで、個々人の役割や責任範囲も明確になっています。
④ Transforming(達成期)
個々人の能力が最大限発揮されていて、チームの成果が達成できている時期です。
メンバーは自立心を持ちつつも、チームに対する帰属意識を持っており、
高いエネルギーが共通のゴールに向かって向けられています。
問題や課題が解決され、チーム全体で成功体験を共有することになります。
このような4段階を経て、成果を出せる最強の組織になっていくと考えられています。
この時に着目すべき点は、2段階目でStorming(混乱期)を必ず経験しなければ、次のNorming(標準期)やTransforming(達成期)には至らない、ということです。
多くの人はStormingすること、つまり意見が対立してぶつかることは良くないことだと捉えてしまいがちです。
その結果、意見の衝突を避けて、Stormingしないまま終わってしまうことがあります。
グループワークでもメンバー同士で意見が対立した場合、限られた時間の中で議論を前に進めなければならないというプレッシャーから、
出来る限り衝突を避けようとして、お互いに自分の意見を通すことに遠慮をしがちになることは多くあります。
しかし、タックマンモデルから考えると、実際にはこの衝突こそが次のステージに進めるための鍵になっているのです。
いつまでも衝突を避けていては、お互いが真の意味で納得した解を導き出すことはできません。
むしろ、しっかりとお互いの意見をぶつけ合った時に、それまで積み上げてきた議論では話が上手くまとまらない場合は、
一度スタート地点にまで戻って見直した方が、かえって良いアイデアが出てくることも少なくないのです。
「破壊と創造」という表現がありますが、まさに一度、ぶつかって壊れるからこそ、生み出されるものがあるということです。
衝突を恐れないこと、むしろ自ら衝突を創り出していくことで、チームを本当の意味で一つにしていくことが、
グループワークの時に、もっと言えば社会に出てからチームで働く時に、成果を出すために必要なことだと言えるでしょう。