最近は様々な場面で聞かれるようになった「リーダーシップ」という言葉。
皆さんも一度はどこかでリーダーシップという言葉を見たり、聞いたりしたことがあるでしょう。
もしかすると「リーダーシップ」と聞くと「自分には向いていない」「自分はリーダーシップとは無縁だ」と思う人もいるかもしれません。
では、このリーダーシップとは一体どのようなものでしょうか。
「カリスマとなって前に立ち、人々を引っ張る力」のことでしょうか。
「確固たる意志を貫き、道を切り開く力」のことでしょうか。
実はリーダーシップ論はこれまで様々な学者によって提唱され、時代を経ていく中で少しずつ変化をしてきています。
今回はこのリーダーシップというものについて、これまでに提唱されてきた有名なリーダーシップ論を参照しながら、紐解いてみたいと思います。
さかのぼると、リーダーシップ論は遥か昔、古代ギリシアの時代からありました。
古代ギリシア時代から1940年代まで、「リーダーにふさわしい人物とはどういう人物か」という議論が幾度となく行われましたが、当時は「リーダーには共通した特性があり、それは生まれつきのものである」という「リーダーシップ特性論」が主流の考え方でした。
その後、時代が進み1940年代、アメリカにて「リーダーシップ行動論」というものが生まれてきました。
これは、上述の「リーダーシップ特性論」のようにリーダーシップを生まれつきのものと捉えるのではなく、「リーダーは行動によってつくることができる」「どのような行動がリーダーたらしめているのか」といった観点で、リーダーが取るべき行動を考えたものです。
リーダーシップ行動論の中で有名なものの一つに、三隅二不二(みすみじゅうじ)が提唱した「PM理論」があります。PM理論とは、目標達成行動(組織のPerformance/成果を優先する行動を取ること)と、集団維持行動(組織のMaintenance/関係維持を優先する行動を取ること)の二軸でリーダーシップを捉える考え方です。
よく「理想の組織とは、成果と人間関係を両立している組織だ」と言われますが、まさに組織の中でそういった状態を創り出す行動こそがリーダーシップの本質であると、PM理論では捉えています。
1960年代に入ると、「リーダーシップ条件適応理論」というものが新たな潮流として出現します。これは、前述のリーダーシップ特性論やリーダーシップ行動論のように「ある特定の理想的なリーダーシップが存在する」という考え方ではなく、「リーダーシップとは状況や条件によって、最適なスタイルは異なる」という考え方です。
1977年にハーシィ(P.Hersey)とブランチャード(K.H.Blanchard) が提唱したSL理論はその代表的なものの一つです。これは部下の成熟度によって、上司が発揮すべきリーダーシップを大きく4つに分類したものです。
更に現代に近づくと「サーバントリーダーシップ」という考え方や、「オーセンティックリーダーシップ」という考え方が出てきます。
「サーバントリーダーシップ」とは、サーバントという名称の通り、「リーダーは部下に奉仕をし、支援する存在である」という考え方であり、従来の「リーダーは組織を引っ張っていく存在である」という考え方とは少し異なります。
また、「オーセンティックリーダーシップ」とは、高い倫理観や道徳観を持ち、そこから一貫した判断や行動を取れるリーダーこそが真のリーダーであるという考え方です。
ここまで、古代から現代に至るまでの様々なリーダーシップの考え方を見てきました。これらのリーダーシップの考え方に共通する要素とは何でしょうか?
確かに時代ごとに、リーダーシップの要素として強調する部分が少し異なりますが、それらの奥に共通して存在する要素があります。
それは「リーダーシップとは、組織の目的目標の達成に向けて、プラスの影響を与えること」だということです。
リーダーシップについて学んでいると、ついつい「どんなリーダーシップが良いのか」という思考をしてしまいがちですが、大切なのはリーダーシップを発揮する目的です。
PM理論であっても、SL理論であっても、サーバントリーダーシップであっても、オーセンティックリーダーシップであっても、最終的なゴールは「組織の目的目標を達成すること」です。
たとえば、カリスマ性のあるビジョナリーなリーダーがいたとしても、そのリーダーが組織の目的目標を達成に導くためにプラスの発言や態度を取っていなかったとしたら、それはリーダーシップがあるとは言えないのです。逆に、カリスマ性はなくても組織のために一生懸命働くメンバーがいたとしたら、それは十分リーダーシップがあると言ってよいのです。
そして一番のポイントは、そういったプラスの発言や態度は、日常の中で自ら選択することができるということです。つまり、誰でもリーダーシップを取ることはできるのです。リーダーシップとは決して難しいものではないのです。
これから皆さんは、ご自身の所属する組織でどんなリーダーシップを発揮していきますか?
■参考文献
「人材育成ハンドブック 今知っておくべき100のテーマ」トーマツイノベーション
「入社10年分のリーダー学が3時間で学べる」杉浦正和